現パロ、炭十郎パパ視点のたんぜん??
不思議系なお話かもです。
2300字/現パロ
自分には愛する妻と、六人の可愛い子供たちがいる。どの子ももちろん目に入れても痛くないくらい大切で可愛いけれど、自分が一番気にしてしまうのは長男であった。
長男の名前は炭治郎といい、実に面倒見が良く、優しい子だった。子供たちは妻のお陰か皆んないい子で優しかったけれど、長男は特に優しかった。家の手伝いも、下の子の面倒も嬉しそうに積極的にしてくれて、子供が六人もいるなかなか大人の手が回らないので、申し訳ないと思いながらも非常に助かっていた。
長男は滅多な我儘も言わない子で、だから余計になのだろう。炭治郎が何か我儘というか、自分の主張を通そうとする時はついつい味方をしてしまう。
まあ、炭治郎は本当に我儘も強い主張もしない子なので、機会は少ないのだけど。数年に一度、あるかないかくらいだ。そして炭治郎がどうしてもと頼むことは、いつだって同じことだった。
「この子を家族にして」
炭治郎は数年に一度、ペットを飼いたがった。一番最初は炭治郎が保育園に通っていた四歳の時で、その時はゴールデンハムスターを欲しがったのだ。
その日は生まれたばかりの次男のためのミルクとオムツを買いに行ったのだ。買い物を済ませていて、もう帰ろうという時に出口付近にあったペットエリアで見かけたのだ。
炭治郎は繋いでいた手を振り解いてハムスターの場所に駆けた。動物を見たいのだろうかとのほほんと考えていた自分とは違い、炭治郎は真剣そのものだったのだろう。張り付くようにして一匹のゴールデンハムスターを見ていた。そして俺の方を振り返り、言ったのだ。
「この子を家族にしたい」
あの日のことは一生忘れられない。お母さんに相談しようかと言った言葉に対して、炭治郎は大泣きして抗議をしたのだ。炭治郎が外で大泣きして駄々をこねることなんて初めてのことだったから、一瞬、何が起きたのか分からなかった。
ゴールデンハムスターが欲しいという炭治郎をなんとか宥めようと試みたが、一切受け付けない。抱えて行こうにも買い物した荷物があって難しい。そもそも捕まえようとすると全身で抵抗してくるので、落っことしてしまいそうだった。しかしハムスターの飼い方なんて知らないし、すぐに戻ると妻には行ったから長居はできない。
仕方がなく、飼ってもいいからまずは一度お家に帰ってからもう一度来ようと提案してみたが、それも受け付けてもらえなかった。炭治郎は泣きながら「ぜんいつがいなくなっちゃう!!」と喚いた。どうやらもう名前をつけてしまったらしく、いよいよ説得が難しいことを悟った。
炭治郎はただハムスターが飼いたいのではない。この目の前にいるゴールデンハムスターでなければダメなのだ。
俺はいい子の長男が全身でこの子が飼いたいというのに負けて、急いで店員さんを捕まえてハムスターを購入した。もう何が必要か分からないので、店員さんのおすすめを全て買った。
炭治郎は目を真っ赤に腫らしながらも、手に入れたハムスターに嬉しそうにニコニコ話しかけている。俺はそれを運転席からフロントミラーごしに見て、喜んでいるからいいかと納得したのだ。
しかしハムスターの寿命なんて短いものだ。ぜんいつは長生きをした方で、三年生きたけれど炭治郎が小学一年生の頃に虹の橋を渡ってしまった。
炭治郎は号泣するかと思ったが、泣くのは妹や弟たちで、炭治郎は泣かなかった。ただ寂しそうにしながらも「ぜんいつ……お疲れ様」と一言だけ言った。
それから炭治郎はいろいろな動物を飼った。ある時は金魚だったし、ある時は怪我をした野鳥を拾って来たりした。いつだって炭治郎は「この子を家族にしたい」と言い、いつだって迎える子の名前は『ぜんいつ』だった。
炭治郎は自分のペットには必ず『ぜんいつ』とつけるのだろうかと思ったが、ある日拾った子猫には『ぜんいつ』と名前をつけず、里親を探して来て引き渡してしまった。その頃は家に『ぜんいつ』はいなかったのに。
「あの子は違うんだ。『ぜんいつ』じゃない」
炭治郎の言っている意味はよく分からなかった。しかしその後も定期的に炭治郎は『ぜんいつ』を家族にした。けれど『ぜんいつ』はいつだって長くは生きない。だいたい三年くらいで天国に行ってしまう。それは単に寿命だったり、元から弱っていたりと理由はさまざまだ。
だけど『ぜんいつ』はいつだって炭治郎に懐いていた。ハムスターでも、金魚でも、野鳥でも、トカゲでもだ。『ぜんいつ』は炭治郎によく懐いていたんだ。
しかし炭治郎が高校生になると『ぜんいつ』は家に訪れなくなった。炭治郎がどういう理屈で『ぜんいつ』を選んでいるかは分からないが、『ぜんいつ』が現れないのに炭治郎はなぜか嬉しそうだった。
それからさらに十年が経ち、炭治郎はいままで以上に幸せそうに笑っている。俺はそれを眺めながら、長男のとんでもない発言に驚いていた。
「……養子縁組をした?」
「うん」
「その子と?」
「うん」
にこにこと炭治郎は笑っているが、こちらは頭が痛い。久しぶりに帰ってきた息子が突然、養子縁組をしたと言ってきたら当たり前だろう。しかも説明を聞いてもよく分からない。養子縁組をした子の母親とは、現時点では結婚はしていないらしい。養子縁組をした段階で、離婚をしていると説明されたが……本当に理解が難しい。
「炭治郎……その子の名前だけど……」
「善逸だよ。我妻善逸。いまは、竈門善逸だけど」
そう言った息子に、俺は言いたい言葉を全て飲み込んだ。それもこれも、炭治郎がこの上なく幸せそうであるのと、件の善逸君が恥ずかしそうにしながらも、なんの不安もなさそうに炭治郎に寄り添っていたからだった。


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