炭善からぜんねず(半プラトニック)から竈門兄妹善になる話

約5000字/原作軸。竈門兄妹サンド。地雷注意。妊娠ネタあり。

 禰豆子が結婚をしたのは19歳の時であった。相手は2つ歳上で禰豆子のことをたいそう大切にしてくれる人であった。まるで禰豆子をガラス細工か異国の姫君か。真綿に包むような愛でもってそっと触れる男だった。
 男は生粋の日本人ながら金の髪をもつ中々の美丈夫で、大人になるにつれそれなりの落ち着きを得て子供の頃の騒がしさは徐々に鳴りを潜めていった。正確には往来で騒がなくなったというだけで家族や親友など気心しれた人の前では変わらなかったが。とにかく男は本人は否定するが見目が良かった。そして性格も難がないとは言わないが、その難すらもどうでも良くなるくらいに優しい人であった。
 禰豆子はその人の妻になれたことに不満はない。兄が嬉しそうに顔を緩めて喜んでくれたし、そもそも男を禰豆子の結婚相手として選んで連れて来たのは禰豆子の兄だった。禰豆子は兄がこの人と夫婦になって子供を作ってそして竈門家を繋いでいってほしいというのだから禰豆子に異はなかった。
 そう。実は禰豆子は婿を取ったのだ。竈門家には禰豆子の他に長男である兄・・・・・・炭治郎がいたが炭治郎は25までに死ぬことがすでに分かっていた。そんな早死にする男の元に誰が嫁ぐのか・・・・・・というわけではなく、炭治郎には心から愛する人がいて、しかしその人とは婚姻ができない事情があった。だからこそ炭治郎は禰豆子に婿を取らせたのだ。
 禰豆子には使命がある。竈門家の跡継ぎを必ず産まねばならない。それも、兄である炭治郎が死ぬ前に我が子を抱かせてやりたい。少しでも成長を見せてやりたい。だからこそ禰豆子は今、とても焦っているのだ。
「やっぱりダメですか・・・・・・」
「ごめん・・・・・・禰豆子ちゃん・・・・・・本当にごめんね・・・・・・」
 布団の上で夫婦で正座をして向かい合う。禰豆子の夫・・・・・・竈門善逸はこれでもかというくらいメソメソと泣いていた。禰豆子は涙を流して謝る夫にこちらこそ申し訳ないと心が痛む。
 この状況が何かといえば禰豆子と善逸は何度目かの夫婦の営みに挑戦しようとしていた。いや、語弊がある。夫婦の営みに何度目かの挑戦をしようとしていたのだ。禰豆子と善逸は夫婦になってもう2年経つが一度も夜を成功させたことがない。善逸は禰豆子を手や唇で気持ちよくしてくれるが、なんと肝心の部分が勃ちあがらないのだ。いくら2人で頑張ろうとも勃ちあがらない。そもそも善逸は真っ青な顔で苦しそうに禰豆子に触れる。そんな罪悪感に塗れていて勃つわけがないし・・・・・・そもそも善逸は禰豆子を女として愛していないのだ。やはり勃つわけがない。
「ごめんなさい。私が悪いんです。私に貰い手がつかなかったから・・・・・・」
「そんな・・・・・・!禰豆子ちゃんは何にも悪くないよ!!」
 優しい夫はそう言うが、禰豆子はそうは思わない。善逸が禰豆子の夫となったのは間違いなく禰豆子を嫁として貰ってくれる人がいなかったからだ。
 禰豆子はほんの数年前まで人とは大きく異なる異形の鬼であった。鬼は人を喰らう存在であったが禰豆子は兄の炭治郎の制止もありなんとか人を喰わずに来られた。もちろん元は禰豆子は人間だ。鬼にされたのだ。しかし炭治郎や善逸たち、様々な人達の尽力があり禰豆子は人に戻った。だがこれで済む話ではなかった。
 鬼であった禰豆子が産む子が本当に人間であるのか、そもそも禰豆子は本当に人間であるのか疑う人がいたからだ。禰豆子は鬼であったが言葉を話すようになり、鬼の弱点である太陽すらも克服した。ゆえに鬼でなく人間だとどう説明すれば信じてもらえるのか途方にくれる。
 飯を食うようになった。だが鬼がそもそも人の飯を食えないのかどうかすら皆分からない。証明にならない。
 成長をするようになった。しかし禰豆子は鬼の頃に幼子のように縮んだり、大人へと変貌したりと身体を自由に変えていた。これもまた証明にならない。
 禰豆子の嫁の貰い手は見つからなかった。絶望的であった。皆が禰豆子を憎んでいるわけではないが、心のどこかで僅かに恐れるのだ。その恐れを禰豆子や炭治郎は責められなかった。
 そこで兄が婿として禰豆子に宛てがったのが善逸だ。善逸は炭治郎が鼻が効くように耳がよく効いた。禰豆子の中からちゃんと鬼の音がなく人間であることを知っていて信じている人だった。禰豆子にはもう善逸しかいなかった。善逸も炭治郎とよく話し合って決めたのだろう。禰豆子を受け入れてくれた。自分の恋人の妹である禰豆子を妻として選んでくれたのだ。
 そう。炭治郎の最愛の人は善逸だ。2人は男同士であったが恋仲であった。2人は禰豆子をたいそう大切にしていて、どちらも優先するのは禰豆子であった。
 炭治郎はいずれ死ぬ自分の他に禰豆子を真に任せられるのは善逸だけだと思っていたし、善逸は炭治郎の願いを叶えてやりたかったし、嫁の貰い手のない禰豆子の不安を取り払ってやりたかった。だから炭治郎と善逸は恋仲という関係を解消して、義兄と義弟という関係になったのだ。
 だがしかし事は上手くいかない。兄である炭治郎の恋人であった善逸は禰豆子に性欲を抱けない。それどころか善逸は抱かれる側であったのだ。炭治郎にすっかり開発し切られてしまった善逸は炭治郎に後ろを弄られないと達することができないのだ。
 これにはほとほと禰豆子も困った。2人の関係は知っていたが、跡継ぎの為と思って善逸に抱かれたいのだがそれが叶わない。一回でいい。一回だけ孕れればいいのにそれすら難しい。炭治郎に子供を跡継ぎを見せてやれない。養子ではなく我が子を禰豆子に抱かせてやりたいと炭治郎は考えて考えてそして善逸を手放したのだ。その想いに禰豆子は応えたい・・・・・・が、できないものはできない。
「あの・・・・・・善逸さん・・・・・・その、今の善逸さんの状態ってお兄ちゃんは・・・・・・その、知ってますか・・・・・・?」
「・・・・・・話してない、です・・・・・・」
「・・・・・・ですよね・・・・・・」
 これでもかと肩を落として小さくなる善逸に禰豆子は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。何しろ善逸は竈門兄妹の都合に振り回されている。本人は自分で選んだと否定するだろうけど、竈門家の事情を良識ある人に話せば1番の被害者は善逸だろう。竈門家長男の凄まじい猛攻に根負けして恋仲になり、散々と身体を暴かれてその恋人でなければ達せなくなったというのに、行かず後家になりそうな妹と結婚して子供を作ってくれと、当の恋人に頭を下げられて・・・・・・。ううむ。何回振り返ってみても酷い話だと禰豆子は頭が痛い。まあ、己も関与しているのだから同罪なのだが。
「ごめん・・・・・・ごめんよぉ・・・・・・禰豆子ちゃん・・・・・・」
「いいんです、いいんです!善逸さん泣かないで!」
「俺が不甲斐ないばっかりに・・・・・・ごめんよぉぉぉ・・・・・・」
 今宵の夫婦の時間も禰豆子は善逸を慰めて終わった。比喩ではない。至って健全に慰めて終わった。具体的にいうと、背中をよしよし撫でただけだ。
(・・・・・・でも、本当にどうしよう・・・・・・)
 禰豆子は焦っていた。兄の時間がどんどん少なくなる。兄は今年で22だ。あと3年あるかも分からない。しかし善逸に無理に迫っても効果はない。善逸はそもそも炭治郎によって炭治郎にだけ開くように改造されてしまったようなものなのだ。誰も悪くはない。誰も悪くはないのだが・・・・・・ううむと禰豆子は悩む。
 子は欲しい。具体的にいうと善逸の子が欲しい。禰豆子の子であれば炭治郎は手放しで喜ぶであろうが、その相手が善逸であれば、竈門家に善逸の血が混ざるのだ。炭治郎は名実ともに善逸が竈門家の礎のひとつになるのを嬉しく思うだろう。
(・・・・・・お兄ちゃんみたいに、善逸さんの後ろを刺激する・・・・・・とか?私が・・・・・・ああ、でも、そんなことしたら善逸さんが衝撃で倒れてしまうだろうし流石に傷つけてしまうわ。心も、身体も)
 そろそろ禰豆子も物騒な考えになってきた。自らの手で善逸を炭治郎がするように昂めてやろうかと考えるも、その考えはすぐに捨てる。善逸が可哀想すぎるし、知識もない自分では兄の炭治郎には到底及ばない。そもそも善逸は炭治郎にだけ閨事の心を開くのだ。
(お兄ちゃんだけ・・・・・・お兄ちゃんだけが・・・・・・善逸さんの中に入って善逸さんを気持ちよくさせられるのよね・・・・・・私じゃあ、やっぱり・・・・・・あ、待って?お兄ちゃんは後ろを使うんだから・・・・・・善逸さんの前は空いてるわよね・・・・・・?)
 禰豆子は天啓を受けたと思った。これが最善の手だと思った。結婚して2年、禰豆子は考えに考えすぎてもう頭は正直いって混迷を極めていたが禰豆子の脳内に指摘してくれる人間などいなかった。

****

「お兄ちゃん!善逸さん!お願い!2人でまぐわってくれないかしら!」
「ね、禰豆子・・・・・・?」
「いやいや!どういうことなの禰豆子ちゃん!?」
 明くる日の朝、離れで暮らす炭治郎と母屋で暮らす禰豆子と善逸は3人で朝食を囲んでいる時、禰豆子が冒頭の台詞を落とした。和やかであった朝食の場は一気に謎の空気に包み込まれた。
「禰豆子・・・・・・その、一体全体、どうしたんだ?その、俺と善逸がどうして・・・・・・その・・・・・・」
 顔色悪くオロオロと視線を巡らせる炭治郎に禰豆子は「そういえばお兄ちゃん、私が2人が恋仲なの気がついてないと思ってるんだったけ?」と思い出し、とりあえず一から説明せねばと禰豆子は炭治郎と善逸の関係のこと、善逸と禰豆子の現状のことを説明した。
 炭治郎はまさか妹に知られていたとは思わなかったらしく、だらだら冷や汗を流しながらも善逸が男として女とするには不能なことや2年経っても初夜ができていないことを黙って聞いていた。黙ってはいたが顔色を青くしたり白くしたり頭を抱えたり顔を覆ったり忙しかった。

「・・・・・・ということで、お兄ちゃんと善逸さんにはまぐわって欲しいの」
「いや待て!どうしてそこに行き着くんだ!?その・・・・・・2人が夫婦として夜の営みが上手くいっていないのは分かった。だが、夜の営みだけが全てではないだろう?というか俺の名前がここで出てくるのも分からないし、な、なぜ俺と善逸がまぐわう必要が・・・・・・?」
 炭治郎は不思議そうにそう言った。ちなみに善逸はもう目が死んでいる。ふらふらと頭が揺れているから座りながら気絶しているのかもしれない。
「必要なのよ!私は子供を産みたいのよ!善逸さんの子供を!お兄ちゃんに私と善逸さんの子供を見せたいのよ!!でもそれにはお兄ちゃんの力が必要なのよ!!」
「な、なぜ!?」
「お兄ちゃんが善逸さんを抱いてるところに私も乱入するから!それで善逸さんの子種もらうから!!」
「禰豆子!?」
「禰豆子ちゃん!?」
 とんでもないことを言い出した禰豆子に兄と夫は目を剥いた。その場はなんとか収めたが禰豆子は諦めなかった。善逸の子種が欲しい。だからお兄ちゃん協力して!!と、とんでもない熱量を注ぐ。
 そこから禰豆子の戦いが始まった。竈門家の夕餉にうなぎやスッポンが日夜、並ぶようになる。精力をつけろと無言の圧力に炭治郎と善逸は逃げ回った。しかし炭治郎の枕元には男同士で使うための閨事の道具が置かれ、善逸は炭治郎の離れに布団を敷いたからと禰豆子に追いやられる。そして肝心の禰豆子は離れの納戸に布団を敷いて眠るのだ。兄と夫がいつ始めても乱入できるようにだ。それを止めるように2人で説得しても禰豆子は頑として聞かない。そんなやり取りが半年も続き、とうとう炭治郎が折れた。
「善逸。やろう」
「ふざけんなよ!!やれるかよ!」
「だがもうすぐ冬が来てしまう!流石に冬に納戸で寝たら禰豆子が病気になる!!もう諦めよう!禰豆子はお前の子が欲しんだ!!頼む!!この通りだ!!」
 炭治郎に頭を下げられて善逸は唸りながら観念した。せめてもの譲歩として禰豆子が見えないように目隠しをしてくれと善逸は求めた。耳がいいから意味ないだろとか思うけど、兄に貫かれながら妹の中に入るなど視界に収めたら死んでしまうと善逸は思っていた。そして竈門兄妹はそれを了承した。他者が誰か1人でもいたら色々と突っ込んでくれただろうが、ここには頭が疲れた3人しかいない。
「善逸、優しくするからな」
「善逸さん、本当にありがとう!」
 にっこり笑う竈門兄妹に善逸は涙を溢しながらも頷く。2人が幸せならそれでいい。それでいいんだと己を納得させた。
 その日から7年。竈門家には子宝が溢れている。長女、長男、次男、次女と4人の子供に恵まれたのだ。そして善逸の妻である禰豆子の腹には新たな命が宿っている。
 きゃらきゃらと笑う子供達を見つめながら、隣でその子供達を嬉しそうに眺める妻と手を繋ぎながら、その甥っ子姪っ子を両手にぶら下げてくるくると回って遊んでやっている元恋人を見つめながら、善逸は「あれ?」と思ったが、まあいいかと考えるのをやめた。

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