STP-XXX

某えすしーぴーのパロディ話です。
かなり不親切なため、ぼんやり読んでください。
約6500字/ややホラーのパラレル???

STP-903 雷神の寵児

オブジェクトクラス:Safe(まあ安全)

 STP-903はやや下半身ががっしりしたアジア人の男性です。見かけは十代後半、身長は165.5センチで、頭髪は金色をしており、非常に臆病です。男よりも女性を好みます。

 STP-903は高い木の上に登ると落雷にあいます。その際、頭から落下しても無傷です。多少、焦げた後はありますが24時間で綺麗に治ります。
また人体として重篤な負傷をしても、時間経過で回復し、致死量の毒に対する耐性がある程度あります。しかし不死性は確認されていません。

 STP-903が死の淵に陥った場合、その状態に追いやった人物は心臓発作を起こして死に至ります。また、周囲にいる救助を行わない者も心臓発作を起こして死に至るため、STP-903が死の淵に陥った際は「いま助けるぞ!!」と叫んで救助に向かってください。適切な処置をした場合、STP-903は徐々に回復状態に入り、数ヶ月後には通常の状態に戻ります。STP-903に対する負傷実験の際は、必ず三名以上で行ってください。その際、一名、または二名はSTP-903に認知されない場所に隠れ、STP-903が重篤な負傷を負った時点で「いま助けるぞ!!」と叫んで現場に突入してください。「助ける」というキーワードを耳にした段階で、STP-903の周りで心臓発作は起こりません。しかし言葉に反し、助ける意思をみせない場合はSTP-903の周りに放電が起き、感電死します。その放電はSTP-903に対し、再び「いま助けるぞ!!」と叫ばない限り続きます。

【補遺1】
 STP-903は非常に高速で移動できることが判明しています。人間には到底出せない速度で移動し、170キロを超えています。掠めるだけで吹き飛びますが、STP-903は敵対意思をみせないため、特に危険はありません。また、指示しない限り高速で移動しません。

 STP-903はサイト16の低セキュリティ棟に収容してください。鍵はかけないでください。閉じ込められていると認識するとストレスで騒ぎます。出歩いても『危険・立ち入り禁止』と書かれている部屋には入らない為、特別無害ですが、必ず一名は職員が同行してください。

 担当は男性のみにしてください。STP-903は女性に対して求愛行動を過剰にとり、その行動を阻止すると機嫌を直すのに6時間を要します。実験以外では女性職員を接近させないようにしてください。

【補遺2】
 STP-903は大変、友好的な態度をとります。どの生物に対しても敵対意思は持たず、収容されている他のSTPに対しても同情的な感情を持ちます。怠惰を好みますが、退屈は嫌いです。また孤独を好まないため、話し相手を求める傾向があります。職員は必ず1日3回はSTP-903の部屋を訪れ、会話をしてください。軽度の事務作業であればさせて構いません。折り紙製作、ホッチキス止め、シュレッダーがけなどが推奨されます。 

 しかしDクラス職員を訪問させる場合は、過去に暴力行動をしていない者に限ってください。STP-903の側に暴力性を秘めている場合、いかなる状況でもSTP-903に暴力を振るいます。

 またSTP-903の担当をする職員は定期的に入れ換えてください。暴力性を持っていない職員は過剰にSTP-903に傾倒していく場合があります。法則性や共通点は判明していません。過剰に傾倒した場合、STP-903に性的な欲求を覚えるようになります。その場合、STP-903を襲った時点で放電が起き、対象は燃え尽きます。

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【観察記録:0553-1】
 STP-903の担当をタンジロウ・カマド博士に変更。STP-903が一定以上の友愛の精神を持つかを実験する。

 カマド博士はSTP-903に対し、目の前で握り飯を握り、三つ提供した。STP-903は全ての握り飯を完食。鮭をことさら好み、他二つのおかかと梅より早く食べ終わった。STP-903は食後のお茶を所望。カマド博士が提供したところ、STP-903はカマド博士を「タンジロウ」とファーストネームで呼ぶ。

【観察記録:0553-2】
 カマド博士がSTP-903に一緒に散歩に行く事を提案。STP-903は喜んだ様子をみせ、室内から出て行く。その際、初めて相手を待つように立ち止まった。自発的に部屋出たわけではなく、散歩に行く事を提案された為と思われる。STP-903は「人と行動する」を認識している。この日、STP-903はカマド博士と施設内を23分間の散策を行った。
 

【観察記録:0553-3】
 カマド博士がSTP-903にカードゲームをする事を提案。STP-903は快諾。三時のオヤツを賭けて1ゲームする。カマド博士が勝利したところ、STP-903は勝負を3回にしてくれと懇願。カマド博士が承諾し、手を抜いて勝たせたところ、STP-903は満足そうにしてオヤツを食べた。しかしSTP-903は一つ切りのオヤツを半分に割り、それをカマド博士に提供。STP-903は他者とモノを分け合うのに一定の喜びを得るように見受けられた。

【観察記録:0553-4】
 カマド博士が定刻に現れない場合、STP-903に落ち着きがなくなる事象を確認。本人に話を聞いたところ、「タンジロウがいないの寂しい」と発言。STP-903が特定の人物に愛着を持つ可能性を確認。カマド博士のスケジュールを調整し、訪問間隔を延長することで、STP-903の感情の機微の変化の調査をすることを提案します。

【実験記録:094】
 カマド博士の来訪を12時間ずらし、STP-903に対してのストレス実験を実施。STP-903は「タンジロウは?タンジロウは無事?」としきりに言い、カマド博士に対し、心配ととれる態度をみせました。その後、部屋の外を出て、施設内をウロウロとし、壁や扉に耳を触れさせる動作をみせています。現段階では理由は不明です。

〈補足〉
 STP-903に対するストレス実験について、カマド博士から抗議がありました。許可なく不当な実験を行ったとして、ストレス実験を提案したCクラス職員は終了処分になりました。

【観察記録:0553-5】
 定刻通りにカマド博士がSTP-903の収容施設に訪れたところ、STP-903は博士の来訪を予期しているような様子を見せました。博士が扉の前に立つ前にソファの前から移動し、扉の前で待機しています。STP-903には未発見の力をまだ所持している可能性があります。STP-903のオブジェクトクラスをSafe(まあ安全)からEuclid(かなりヤバい)に変更するのを提案します。

〈補足〉
カマド博士により提案は却下されました。

【観察記録:0553-6】
 STP-903とカマド博士の接触時間を3時間から24時間に変更します。カマド博士はSTP-903に対し、3回分の食事の世話と、入浴の手伝いをし、添い寝をし、8時間の睡眠をとらせました。STP-903は怯える様子は一切なく、常に微笑みを浮かべているように見受けられました。

〈補足〉
カマド博士の申請により、監視方式が変更になりました。常時監視から監視カメラによる録画のみとなります。セキュリティ担当者はSTP-903の収容施設の監視カメラの設定を変更してください。

【補遺:STP-903収容違反記録】

事案3:
 ●●●●年●月●日、STP-903の収容違反が発生。サイト16内のどこにも姿はなく、カマド博士の姿もなかった。セキュリティ担当者が監視カメラの録画データを確認したところ、収容違反が発覚する十二時間前にSTP-903とカマド博士が《削除済み》をしていた。二人は丁寧に服を脱ぎ、ベッドの上で約四時間ほど《削除済み》をしていた。カマド博士は最後まで生存しており、《削除済み》の後に二時間ほどベッドの中でSTP-903の頭部を撫で、好意を示す行動をとっていた。

 その後、カマド博士は衣服を着用し、STP-903を伴ってサイト16を徒歩で出ている。この際、行き交う職員、ガードマンなどに対して朗らかな笑顔で手を振り、「《削除済み》は返してもらうな」と話していた。

 現在、カマド博士とSTP-903の所在は分かっていません。エージェントは行方を追ってください。

 またSTP-903のオブジェクトクラスはEuclidに変更となります。

事案4:
 カマド博士がSTP-903の収容違反を引き起こした件について、目撃していた職員、ガードマンは一切慌てる様子なく、また報告をあげていない。そもそもSTP-903の室内に設置している監視カメラの設定変更などの承認をなぜしたのかなど、サイト16内の職員の判断に疑念を持つ点が多い。関係者を集め、サイト16外の職員が聞き取り調査を実施することを提案します。

聞き取り調査:記録1

エージェント「あなたはなぜ、STP-903とSTP-714を接触させたのですか?」

主任研究員「言っていることが分からない。STP-714など存在していない」

エージェント「……聞き方を替えましょう。報告書にあるタンジロウ・カマド博士をなぜSTP-903の担当に?」

主任研究員「それはもちろん、カマド博士が希望されたからです。彼は常に誰かの世話をしたがる。それが彼の生きがいなんだ」

エージェント「STP-714の特性は把握しているのですね。カマド博士がこの施設に来た日時を覚えていますか?どのようにこの施設に来ましたか?」

主任研究員「彼がここに来たのは●●●●年▲月▲日だ。コンテナの中に入れられていた。彼はとても理知的で、コンテナに入れられてきたことはちっとも怒っていなかった」

エージェント「その後、カマド博士はどうしていましたか?」

主任研究員「STP-903の世話を希望していた。我々はそれに応えただけだ」

エージェント「なぜ希望に応えたのですか?彼が担当する必要はなぜあったのでしょう?」

主任研究員「それはもちろん、博士が望んだからだ。カマド博士は素晴らしい。公正で、慈愛に溢れ、親切だ。彼が望むならば、それは善であり、行われるべきことだ。彼は何も間違えない」

エージェント「なるほど。最後にSTP-714に関するこの報告書を音読してください」

主任研究員「……音読も何も、何も書かれていないが?」

エージェント「分かりました。もう結構です。聞き取り調査を終わります」

STP-714 ヒノカミ

オブジェクトクラス:Euclid→Keter

 STP-714は筋肉質なアジア人の男性です。見かけは十代後半、身長は165センチで、頭髪は赤みがかった黒で、額に傷痕があります。両耳に耳飾りをつけています。性格は非常に友好的で、財団職員に対しても他STPに対しても親切です。
 STP-714は十二の動きから構成されるダンスをします。常日頃ダンスをするわけではありませんが、ニューイヤーの際は朝日が時間まで連続で踊り続けました。STP-714に疲労は見られませんでした。
 STP-714にはどんな怪我でも数秒で治ります。また心臓と脳が少なくとも五個以上あるのが確認されており、不死性があると思われます。
 また彼は誰かの手助けをするのを好みます。睡眠不足の職員には子守唄を歌い、腹を空かせたものには握り飯を作って配るなどをします。STP-714に歌唱力はないが、握り飯に関しては職員に盛況をはくしています。

 STP-714はサイト57の低セキュリティ棟に収容してください。広さは十分に確保し、財団職員の付き添いがあれば施設内を移動して構いません。また主に肉体労働をさせてあげてください。STP-714は基本、忙しそうに働きたがります。

【事案1】
 STP-714の全体を圧迫して肉片にし、不死性を確認する実験を実施。結果はSTP-714を圧迫する前に実験室に職員Bが乱入し、銃を乱射。実験を行う予定であった博士を含む職員三名が死亡。銃を乱射した職員Bは「鬼の首を落としたぞ!!」と叫び、STP-714に対して「カマド!無事か!」と発言しました。
 職員BはSTP-714の担当職員でした。職員BはSTP-714を『タンジロウ・カマド』と認識し、STP-714という概念を認識しませんでした。本人が記録したSTP-714の報告書も読むことができず、STP-714というものを教えても覚えることはありませんでした。

 STP-714はミーム汚染を発生させることが判明しました。ミーム汚染された者はSTP-714に対し、異常な親切心と肯定感を持ちます。STP-714の発言、行動を正当なものと認識し、害するものを排除し、求めるものを叶えようとします。

 調査の結果、STP-714のダンスにミーム汚染の効果を確認しました。STP-714のダンスが始まった場合、職員は速やかに直視しないようにし、距離を取ってください。

【事案2】
 STP-714のダンスを監視カメラごしに見た場合もミーム汚染が発生することを確認。セキュリティ担当者がSTP-714に対し、収容違反を手助けし、自身の権限で閲覧できる全てのSTPのデータを開示していた。セキュリティ担当者は記憶処理をしてもミーム汚染が除去できなかった為、終了処分とした。

【事案3】
 STP-714の収容違反が発生。発生してから確認されるまで、三週間以上の空白があった。サイト57の職員の殆どがSTP-714にミーム汚染されていた様子。STP-714はサイト57の研究員Aに対し、自身をサイト16に移送させるように指示。
 研究員AはSTP-714のダンスを記録したデータをサイト16の研究員Cに強制的に視聴させ、ミーム汚染を発生させました。その後、STP-714をサイト16に移送。研究員AはSTP-714の移送の隠蔽工作をしました。

【事案4】
 サイト16に移送されたSTP-714は研究員Cの手引きでSTP-903に接触。他研究員はSTP-903を使ったSTP-714の実験と周知される。周知された実験内容としてはSTP-903と《削除済み》した際にSTP-714は燃え尽きるかという実験内容であった。
 実験資料にはSTP-714と最初表記されていたが、途中から『カマド博士』の表記に変化していっている。研究員Cに聞き取り調査をしたが、深刻なミーム汚染により言動は不明瞭であり、詳細は不明。サイト16内の他職員にも聞き取り調査を行ったが、全員にミーム汚染が確認された。汚染の深刻度は異なるが、除去ができない為、職員112名全員を終了処分とする。

STP-714はSTP-903と《削除済み》の後、サイト16から姿を消している。室内に設置されていた監視カメラの録画によると、STP-714は執拗にSTP-903に対して《削除済み》をしていた。STP-903は拒否する様子は見られず、積極的にSTP-714に応えているように見受けられる。
《削除済み》の最中、STP-714はSTP-903を「ゼンイツ」と呼び、STP-903はSTP-714を「タンジロウ」と呼んでいた。

【補遺:072-1】
 《削除済み》州にてSTP-714とSTP-903の姿を確認。エージェントが捕獲を試みた結果、STP-714は触手を生やし、エージェントを殺害。STP-903を連れて、その場から逃走。記録媒体に残っていた映像に音声が残されていました。

「ごめんよ。俺たちのことは、どうか放っておいて」

 波長から、メッセージはSTP-0903のものと判明しました。引き続き、STP-714とSTP-903の追跡を行ってください。

【補遺:072-2】
 日本の《削除済み》から一枚の写真が出てきました。そのにはSTP-714とSTP-903に似ている少年達が写っていました。撮影時期は大正時代頃と思われます。

報告は以上です。

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